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島本美由紀の「韓国文化ア・ラ・カルト」 vol.1
Part1 美容と健康のための「五味五色」と「医食同源」 文・写真/島本美由紀





PROFILE

島本美由紀さん
(しまもとみゆき)

1975年生まれ。韓国人の父と日本人の母の間に生まれ、幼い頃から韓国料理・文化に慣れ親しんで育つ。韓国料理教室「さらみ」主宰他、旅好きな料理研究家としても雑誌やテレビで活躍している。著書『ビューティ・ソウル』(情報センター出版局)、『韓流グルメガイド』(彩図社)好評発売中。旅のエッセイの他、フードジャーナリストとしても執筆多数。

 はじめまして。島本美由紀です。
 韓国料理で大切なのは、「五味五色」と「医食同源」。「五味五色」とは、〔辛味・苦味・甘味・酸味・塩味〕の五つの味と、〔赤・青・黄色・白・黒〕の五色のこと。古代中国から伝わる、陰陽五行説に基づいた、五味五色を食べることが健康な体をもたらすという韓国の食への基本思想が象徴されているようです。
 そして、「医食同源」。この言葉をみなさんはご存知ですか?食事をすることも、病気を治すことも生命を養い健康を保つためで、その本質は同じだという考えです。この2つが根底にあるのが韓国料理で、美容にも健康にも、とっても効果があります。
 韓国では、食堂や家で使う皿は、白や絵柄がないシンプルなものを使って料理を盛り付けています。素材を生かした色とりどりのナムルが並ぶだけで、テーブルが華やかに見えますよね。目で楽しむだけでなく、自然と健康も考えた料理が韓国料理なんです。
 そして、この代表的な料理といえば、韓定食やビビンバです。


韓国料理“ビビンバ”は、混ぜの食文化


色とりどりのナムルをご飯に並べ、豪快に混ぜていただくビビンバ。
韓国ではテンジャンチゲ(味噌汁)や、小皿のおかずが数種類付いて\600くらい。
 子供の頃、「韓国料理は、食べ方ひとつで美味しさが変わってくる」と、祖母に教わりました。「ビビンバ」は、その代表的なものです。このビビンバの美味しい食べ方には、ちょっとしたコツがあります。
 冷蔵庫に残ったナムル数種類をご飯に盛り付け、今にも黄身が垂れそうな半熟の目玉焼きを乗せてビビンバに。これを家族全員無言になって混ぜるのが、我が家の定番風景でした。
 色とりどりのナムルがきれいに並べられたビビンバ。これを見て、冷蔵庫にある残り物で作ったとは誰も思わないでしょう?混ぜてしまうのは、何だかとっても、もったいない気がしますね。でも、ビビンバは混ぜるのがポイント。混ぜてこそ本来の味が楽しめるというものですから、混ぜ方には寸分の妥協も許されません。どんなに腕が疲れても、これでもかとばかりに、原型が分からなくなるほど、混ぜて、混ぜて、混ぜなければなりません。
 韓国には、鍋奉行じゃなくてビビンバ奉行がいます。よく混ぜないで食べようとすると、祖母が飛んできてスッカラ(スプーン)を取り上げられ、「まだまだ、混ぜ方が足りないよ!」と、よく注意されたものです。韓国に行った友人からは「ビビンバを食べていたら、店のおじさんが来て、親切によく混ぜてくれた」という話しを聞きました。「親切に混ぜてくれた」というより、「見ていられなかった」に違いない・・・。
 実は私も、よく混ぜないで食べようとする主人から器を取り上げて、有無を言わせずおもいっきり混ぜてしまいます。最近では、主人から先に「混ぜて」と器を差し出す始末。今や私も、立派なビビンバ奉行??

ビビンバはスッカラで、器はテーブルに置いて食べるのが韓国式マナー


箸の置き方も日本と微妙に違う。
日本は箸を手前にして横に置くが、韓国では縦に並べる。
 ビビンバを食べる時に使うこのスッカラ。日本のスプーンに比べて柄が長くて平べったいのが特徴です。ご飯が食べやすく、スープだって飲みやすい。そしてこれが、実は日本と韓国の食べ方の違うポイントなんです。
 日本では、ご飯や味噌汁を食べるときに片手で器を持ちますが、韓国では、器はテーブルに置いたままで食事をするのが礼儀。器を持ったり、口を付けたりして食べるのは、韓国では行儀の悪いこととされています。
 実は私も日韓の文化の違いに戸惑いました。小学生の頃、友達の家でご飯を頂くことになって、我が家でいつもやっているようにスプーンでご飯を食べていると、友達のお母さんにちょっとヘンな目で見られ、子供ながらに動揺したものです。ご飯も汁物も、韓国では皆スッカラ(柄が長いスプーン)で食べるから、器を持って口まで運ぶ必要がないのです。したがって、箸を使うのは、おかずを取る時だけ。昔から主に金属製の食器を使う韓国。熱くなるうえに重いため、持つことができないというのが理由だそうです。

日本でも大人気の“石焼ビビンバ”は、全州(チョンジュ)が発祥の地

 さて、食文化の町として有名な全州(チョンジュ)では、何種類ものナムルやお肉など20種類以上の食材が入った、まさにビビンバの具のビビンバで有名です。そして、この町の「全州中央会館」という店で、“石焼ビビンバ”が誕生しました(全州伝統ビビンバ)。石焼ビビンバとは、熱々の石鍋に入った韓国風焼き飯のようなもの。石鍋が熱いからご飯が焦げますが、この焦げたご飯の食感とナムルが混ざり合って、絶妙な味を見せるのです。かなり熱いので、猫舌の人にはちょっと無理ですが、パチパチと愉快な音が鳴り、全部たいらげるまでひたすら「フーフー、アチチチ!」と言いながら食べる面白さ。
 普通のビビンバに比べて、使う材料が豊富で高級感があり、石鍋を使って調理するので格別な味になるのです。あ〜、考えただけでお腹が空いてきました・・。ビビンバ大好きな我が家には、もちろん石鍋があります。韓国の市場に風呂敷を持参して担いで日本に帰ってきました。重くても美味しいビビンバを食べるために、苦労は惜しみません。
 でも、石鍋がなくてもフライパンを使って簡単に石焼ビビンバが作れるんですよ。フライパンにゴマ油を垂らし、ご飯を乗せナムルを並べます。火をつけてパチパチ音がしてきたら出来上がり。あ、最後に半熟卵や黄身も乗せて混ぜ混ぜしてくださいね。友人が遊びに来るときには、卓上コンロを用意してよく大きなビビンバを作ります。お焦げができたらみんなで混ぜ混ぜ。これが楽しいんです。そして旨い!

「全州伝統ビビンバ」
牛肉の肉汁により美味しい大豆もやし飯に、季節の惣菜を自然の摂理に従って作ったビビンバに、全羅道の特産物である肉の膾とファンポムクを乗せた全州伝統ビビンバは、自然の神秘な理知と陰陽五行の原理を人間の生活に取り入れた韓国の伝統料理。特に五実果(ごみし)と黄百ジタン(卵を黄と白に分けて薄くフライにする)は芸術的でもあり、混ぜて食べるのがもったいないくらい。

韓国では女性でも、食事の時にあぐらをかく

 韓国では食事の時には、決まって“あぐら”をかきます。器を持たないと、正座だと自然に食べる姿勢が悪くなってしまうので、足を崩して食べるのだとか。
 韓国の寒い冬は、オンドルの上でぬくもりを感じながら、ゆっくりと食事をする風習なので、食堂で正座して食べていると、「そんなんじゃ食べにくいだろ〜」と店の人があぐらを勧めてくれます。正座は韓国では罪人のイメージが残っているし、「そんなに気を使わなくていいから、気楽に美味しく食べましょう」という意味もあるんですよ。
 韓国に行ったら、女性でも臆せずあぐらをかいて、器を持たずにスッカラでご飯を食べましょう。“郷に入っては郷に従え” です。ただでさえ美味しい韓国料理が、一層美味しく食べられると思います。

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