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T氏 とはもう一つ想い出がある。ソウル郊外の北漢山への登山に誘われた。山の中に古い寺院があるから、予備取材に行こうと言うのだった。
季節も好いし、息抜きにちょうど良いと、T氏の案内で出かけた。途中まではたくさんの登山者がいた。
ところがT氏の案内するお寺への山道には、人影がまるっきり無い。私はやや不安になったが、T氏は「もう少し上です」と確信ありげに言う。
しばらく行くうちに彼も首をかしげ始めた。大きな岩を廻り込んだところで、小銃を構えた兵士と鉢合わせした。
見ると数人の兵士がいて、岩の上に据えられた機関銃がこちらを狙っている。隊長らしき男が、呆然としている私のパスポートを取り上げた。
下山を許されたのは、1時間後だったか、2時間後だったか・・・。
その間の時間は凍り付いたようだった。
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あれから四半世紀たった去年の秋、私はソウルを再訪した。街からは小銃を持った兵士の姿が消え、代わりにギャルが群れ歩き、12時過ぎても人々は居酒屋で焼酎やマッコリルを酌み交わしている。
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時代は確かに変わった。仁寺洞の裏路地を彷徨しながら、私はあの息苦しかった時代を、奇妙にも懐かしく想い出していた。
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土屋右二 昭和17年生まれ。 昭和41年東京教育大学卒業。同年、講談社入社。
『婦人倶楽部』副編集長、『HOT-DOG press』編集長、『DAYS JAPAN』編集長、編集局次長を歴任。
平成2年有限会社 土屋事務所を設立。 TBSブルタニカ『Bacchus』編集長、同朋舎出版『GEO』編集長を務める。
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| 平成8年 株式会社 浩気社を設立し、代表取締役として現在もますますご活躍中である |
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