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韓国で開かれているドル(1歳の誕生日)パーティー。最近はレストランやイベント会社を利用する人が増えている。

自分の誕生日に必ず食べる「ワカメスープ」、1歳の誕生日に将来の職業を占う行事「ドルジャビ」。これらは日本や中国など他のアジアの国にはみられない韓国独自の習慣です。今回は、千さんがその習慣の謎を解き明かしてくれます。

“ワカメスープ”で祝う誕生日、そのワケは?

 韓国の女性なら誰でも、出産後初めて口にする食べ物は「ワカメスープ」と決まっています。そして1か月間ずっとわかめスープを食べ続けます。私も出産後1か月以上も毎日、1食も欠かさず食べました。「飽きないの?」と言われると、「匂いもかぎたくないほど飽きるわよ!!」と叫びたくなります。しかし、からだの回復のために食べざるを得ないのです。
 ワカメには産後の回復によい成分が豊富に含まれています。まず、消化がよく栄養分が多いため、産婦の気力を高めてくれます。また、血液の循環を滑らかにして、汚れた血液を排出し、血液もアルカリ性を保てるようになります。
 また、子宮収縮や便秘にも効果的で、たくさん食べても太る心配がありません。そして何よりもワカメを食べると、母乳の出がよくなるのです。母乳を吸う赤ちゃんは、ワカメスープの成分が含まれている母乳を毎日飲むことになります。その象徴的な意味もあって、韓国では産んでくれた親に感謝の気持ちを込めて、誕生日にワカメスープで祝福するというわけです。
 さて、韓国風ワカメスープの作り方を教えます。調理法は簡単で、だし汁にワカメを入れて煮るだけです。だし汁に使う食材は、アサリ、カキ、タラや煮干などの干した魚、ウニなどの海産物や牛肉、牛の骨などです。


千さんのお母さんの手作りのワカメスープ。カキでだしをとったもの。韓国の産後の食卓には毎食欠かせない。

 まず、だし汁の具を入れて数分煮たて、だしが出たらワカメを入れ、薄口醤油(韓国では朝鮮醤油またはスープ用の醤油)で味をつけてもう一度煮ます。皆さんも、お好みの具を入れて、ワカメスープを作ってみたらいかがでしょう。
マタニティーブルーの予防にもなる“産後調理院”

 韓国では病院で出産して、大体3日後に退院します。その後自宅に戻ったり、「産後調理院」に入ったりします。産後調理院は日本にはない施設で、産後のママと赤ちゃんの健康を専門的にケアするところです。以前は独立した施設として作られていましたが、最近は産婦人科と連携して、同じ建物内でいつでも医者と専門スタッフに診察やケアを受けられる仕組みになっています。また、まだ数は少ないですが漢方医学関係の病院で漢方医学を中心にケアをする産後調理院もあります。
 産後調理院は、設備やサービスが少しずつ異なり、その費用にも差があります。最大の利点は、赤ちゃんの面倒をみてくれて、産婦は家事をやる必要がないため、からだを十分に休めることができるということです。サービスとしては、産婦の食事や栄養管理、産婦の肌・体のマッサージ、ヨガ・運動などによる体型管理、会陰・子宮・骨盤管理、授乳指導、育児情報・教育などがあります。施設内には産婦さんが大勢集まっているので、赤ちゃんの情報交換やお母さん同士の交流になり、マタニティブルーの予防にもなります。私の友だちも産後調理院で親しくなったお母さんと、今でも育児の情報交換をしたり、親交を深めているそうです。


韓国の産婦人科の病院や産後調理院などで出る一般的なメニュー。
 韓国では女性の健康において産後の母体のケアには極めて注意を払っています。産後のケアが不十分だと一生さまざまな病気に苦しむと言われ、家族や親戚、周りの人々からとても大事にされます。しかし、最近では実母や姑が仕事などで産婦の面倒を見ることができない、家族に苦労をかけたくない、より専門的なケアを受けたいなどの理由で産後調理院に入るのが一般的な傾向です。
 私の場合は産後調理院に入らず、実家の母に面倒を見てもらうことにしました。韓国では、産婦がシャワーを浴びるのは出産してから一週間後です。またオンドルを利用して部屋の温度を熱くします。オンドルの温かい部屋でも、ばばシャツと厚い靴下を必ず着用し、外出することは禁じられます。産婦の体の経穴に、「風」が入らないようにするためといわれています。冷たい「気」が産婦の体に入ると、年をとってから病気をするからだそうです。もちろん、私も母にすべてを無理やりやらされました。
赤ちゃんの成長を祝う、百日(ペギル)パーティー



韓国では赤ちゃんの百日記念に、スタジオで記念写真を撮る習慣がある。千さんの息子さんの百日記念写真。
 そして、「三七日(サムチリル)」になりました。この日からやっと、母から強要されていたさまざまなことが少し緩くなりました。三七日とは、1週間(7日)が3回過ぎたという意味で、出産してから21日目をさします。医学があまり発達していなかった昔、赤ちゃんと産婦が7日間を単位にして、無事に過ごせたことを餅などでお祝いしたそうです。産後21日経つと産婦の体が順調な回復に向かっているとみなされ、お客さんが赤ちゃんや産婦を訪ねるのも三七日を基点に行われます。私の友だちもその日を過ぎてから会いに来てくれました。
 次に大事な日は百日(ペギル)です。赤ちゃんが100日まで元気に成長したことをお祝いする行事です。私も周りの人を招待して「百日パーティー」を行ないました。最近では家族だけで祝ったり、写真館で赤ちゃんの記念写真の撮影だけにしたりと、昔よりお祝いが簡素化されています。
1歳の誕生日“ドルジャンチ”には面白イベントが!?



伝統的なドルサン:「ドル」は1歳の誕生日のパーティー、「サン」は食卓の意味。ドルパーティでは、祝福のための縁起物が並べられる。〔最前列(左から)〕:なつめ、麺、米(手前は長い糸)、ワカメスープ、果物 〔中央列(左から)〕:餅(ソンピョン)、弓と矢、硯・筆・紙・本、野菜 〔最後列(左から)〕:餅(ムジゲトク)、餅(ペクソルギ)、餅(ススキョンダン)、果物。
 韓国では赤ちゃんの初めての誕生日は、特別に「ドル」と命名し、親戚や近所の人たちを招待して「ドルジャンチ」と呼ばれるドルパーティーを行ないます。最近はホテルやレストランなどを借りて行なうのが一般的です。ドルパーティーには、「ドルサン」といって、さまざまな縁起物を食卓に飾り、ドルサンを背景に記念写真を撮ります。
 たとえば、男の子の場合は弓と矢を置き、「武人(ムイン)」になることを願います。日本で言うと「侍」に相当するのでしょうか。女の子には、弓と矢の変わりに、「定規」または「縫い物用の針」を置き、手先が器用になることを願います。他には、麺:長寿、餅:なつめ:子孫の繁盛、本・墨・硯・紙・鉛筆:文章が上手な人(作家など)あるいは勉強ができること、米:財産家、刀:料理が上手な人、餅(ソンピョン):広い心・物心がつく、餅(ムジゲトク):限りない夢が虹(ムジゲ)のようにさまざまな色で咲く、餅(ペクソルギ):白い餅で、貞潔・純粋・長寿、(ススキョンダン):赤い餅で、徳を磨く・魔よけ、お金:お金持ち、巻き糸:長寿などの意味が込められています。


ドルジャビ:「ジャビ」は握るという意味。赤ちゃんが将来、どのような仕事に就くかを占う行事。
 そのパーティーのなかで面白いイベントがあります。赤ちゃんの前に、未来の仕事を象徴する品物が用意され、赤ちゃんが興味を示して握るものでその子の運命を占う行事で、「ドルジャビ」といいます。
 たとえば、鉛筆やノート(学者、先生、弁護士など勉強することができる仕事)、お金(銀行員、社長など金をもうける仕事)、玩具の武器(警察、軍人など)、サッカーボール(スポーツ選手)、聴診器(医者)、長い糸(元気で長生き)などが用意されます。
 しかし最近では、弓と矢や縫い物用の針など伝統的なドルサンは消えつつあります。最近は、IT企業家を意味するマウスや医者を意味する聴診器、芸能人またはアナウンサーを意味するマイクなど、親の願いが込められたものを入れています。自分の子が武人や手先が器用になることより、医者やお金持ち、芸能人、または学者など今の時代に合う、良い仕事に就くことを願うからでしょう。このドルジャビは2回行なわれます。つまり子どもに将来を2つ選ばせるわけです。それにしても、生まれて1年しか経たない自分の子の未来を、笑いと共に覗きたがる韓国人の国民性と親の願望が表われた行事といえるでしょう。

千凡 晋(チョン ボンジン)プロフィール

1975年韓国全羅道生まれ。韓国高麗大学大学院美術教育科卒業。韓国ソウルの高明小学校で教員を勤める。結婚後、2002年に来日し、04年に「美術世界」の日本記者として活躍。06年東京学芸大学大学院美術科教育専攻修士課程卒業。現在同大学大学院博士課程在学中。美術全般に造詣が深く、自らもアーティストとして個展を開く。昨年12月に男児を出産し、目下子育て奮闘中。写真は息子さんの百日記念写真。左から千さん、息子さん(6ヶ月)、ご主人。