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イ・チャンドン監督&柳美里シネマトーク『シークレット・サンシャイン/密陽』を語る
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シークレット・サンシャイン/密陽



 映画は、夫を交通事故で亡くしたばかりのシネ(チョン・ドヨン)が幼い息子とともに、ソウルから亡き夫の故郷である地方都市・密陽(ミリャン)に移り住むところから始まる。シネはこの見知らぬ土地でピアノ教室を開き、新たな人生を始めようとする…。だが、隣人たちとうまく馴染めない。そして再び、思いがけない事件がシネと息子にふりかかる…。
 舞台は、韓国慶尚南道・密陽の街。どこにでもあるような平凡な地方都市だが、名前がどこか神秘的である。


シネ(左:チョン・ドヨン)は幼い息子を連れて、亡き夫の故郷・密陽で新たな人生のスタートをする決意をする。途中車が故障し、自動車修理工場を営むジョンチャン(右:ソン・ガンホ)と一緒に密陽の街へ向かう。
「密陽(ミリャン)の意味を知ってますか?」
「意味?考えたこともないね」
「秘密の密に、陽射しの陽。秘密の陽射しなんて素敵でしょう?」
「秘密の陽射しか……。いいね」
 こんな会話をしながら密陽の街に着く。シネは、この街で新たに生活を始めようとするが、彼女の苦しみは癒されることがない。宗教に身を任せても人の優しさに触れても、彼女の心を救うことはできなかった。シネはただひたすら日常を生きようとするが、運命は彼女をさらに苦悩へと導いてしまう…。

 「あなただったら、それでも生きていけますか?」という問いかけが聞こえてくるようだ。絶望の淵に立たされた時、人はなにを支えに、なんのために、そしてなにを求めて生きていくのだろうか?「生きる」ということの意味を考えさせてくれる映画がここにある。そして、映画を観た人の心の中にも優しく陽射しが差し込むはずである。


苦悩した後には、再び自分の足で歩いていかなければならない。苦悩の連続が生きることなのかもしれない…。
 『オアシス』(2002年)の成功の後、文化観光部長官を2年間務めたイ・チャンドンが映画界に復帰し、5年ぶりにメガホンをとった。韓国の典型的な地方都市である密陽を舞台に選び、現地で4ヶ月間に渡りロケ撮影された。鋭い社会批判を織り込みながら、一種のサスペンス映画としても見応えのある作品は、観る者の安易な予想を裏切りつつ、強烈な緊張感を最後まで持たせてくれる。
 シネを演じるチョン・ドヨンは、第40回カンヌ国際映画祭で最優秀女優賞を見事受賞し、世界の脚光を浴びた。役作りに苦心したと言うものの、日常のいたたまれない表情や人生の絶望感と葛藤する演技力は、最優秀女優賞に相応しく超一流である。ジョンチャン扮するソン・ガンホにも存在感がある。悲嘆に暮れる彼女を静かに見守る姿に、演技を超えた本当の優しさを感じる。

 最後まで苦心したという陽射しの中でのラストシーン。陽射しを浴びながら、ささやかなものを捨てようとする彼女に、これからの生きる決意がみられる…。




イ・チャンドン


チョン・ドヨン、ソン・ガンホ、チョ・ヨンジン、キム・ヨンジェ、ソン・ヨンジョプ他

[2007年/韓国/カラー/141分/ドルビーSRD]



http://www.cinemart.co.jp/sunshine/